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結婚式、いいなぁって思ってたんだ。
したいなぁって。
「レストラン、どこにしようか」
「……そうだなぁ」
「あんまり外食しないもんね」
「ふぁ、そうだな」
拓海が大きなアクビをした。眠そうだ。
「今度一緒に探そうぜ」
「うんっ!」
もう寝ちゃいそう。
仕事だったもんね。
疲れてるよね。
帰って来てから、たくさんエッチなことしたし、夕飯遅くなっちゃったし。
お風呂二回入ったし。洗濯したし。
拓海がぎゅっと僕を引き寄せて、退屈な時とは違う、ホッとしたって感じの溜め息をひとつ零した。
その溜め息が僕はとても大好きで、ぎゅうぅぅって抱き付き返すと、クスクス笑いながら「苦しい」って呟くんだ。
「マコ、ベアハグ、苦し……い」
ほらね。
それで、見上げると少しだけ笑いながら、もう寝る直前。半分、あっちの世界に行ってる。
少しだけ顔を覗き込んだら、穏やかな寝息が聞こえてきた。
結婚式かぁ、楽しみだな。
どこのレストランがいいだろう。
「……」
プロポーズしてもらえてすっごくすっごく嬉しかったんだ。
そのすぐ後にバタバタしちゃって、もう忙しくて、少しだけ辛くて。
とても尊敬していたから。友達だと思っていたし、一緒に警察官として市民を守る、すごく頼もしい味方だって、同僚だって思ってたから。
この仕事をしていたら、世界が良い人ばかりじゃないってわかる。
悪意はちゃんと存在しているって。
良い人ばかりなら、僕らの仕事は必要ない。でも、毎日仕事はあって、二十四時間必要な仕事で。
だからね、僕らのことを両手を上げて認めてくれる人ばかりじゃないのはよくわかってるんだ。
そして、眞子も。
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