第1ヒント

3/4
前へ
/4ページ
次へ
さっきの場所に着くと、 まだ人影が動いていた。 どうやら、カップル同士の喧嘩らしい。 なんだ、つまらない。 家に帰ろうと思ったその時だった。 『殺してやる』 耳に低く残った言葉。 どうやら、女の人が男の人に向かって 低くつぶやいた言葉らしい。 私は、何故か口もとがゆるんでいた。 よく見ると、 男の人の方に見覚えがあった。 バイト先の常連さんだ。 金髪がよく似合ってて、 一際目を引く常連さん。 この人がもしこの場で この女に殺されたら、 …困るなぁ。 『あの、すみません。』 突然話しかけてきた私を、 女の人は睨みつける。 『今取り込んでんの!! わかんない!?』 取り乱した女の人の顔は、 涙のせいなのか汗のせいなのか、 化粧が崩れてみっともない。 落ちたマスカラが、 頬にあとを残していた。 『ええ、そのことなんですけど。』 口元が緩む。 『はぁ!?』 キンキンとする女の人の声。 眉をひそめる呆れ気味の男の人。 『あなたが 死ねばいいと思うんですよね。』 道に落ちていた大きな石を両手で持って 振りかぶり、 女の人の頭めがけて振り下ろす。 ゴンッと言う鈍い音がして、 女の人が倒れ込む。 カランと音を立てて ポケットから出てきたのは、 小型のナイフ。 男の人がそれを拾うと、 私に無言で差し出してきた。 緩まった口角が、さらに緩まる。 そして、小型ナイフを女の人の腹部に 差し込んだ。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加