90人が本棚に入れています
本棚に追加
「ひさしぶり」
潤君はチラッと視線を流し俺を見た途端、ピタリと固まった。
「……シュ、ウ?」
「あは、覚えてた?」
大きな目を更に大きく見開いてる。
「え? マジ? なんで? なんで?」
まるで食って掛かるみたいに声が大きくなって、テンションが上がっていく潤君。
「ビックリだよね。ほら、同じ浴衣。俺もあの旅館に今日から社員旅行で来てんの」
「うわーーー! マジかよー! 何年ぶり? 五年? 六年? すげー偶然!」
「ねー。どうよ、元気してた?」
『端正』という言葉がピッタリ当てはまる顔立ちの潤君。その整った綺麗な顔を惜しげもなくニコニコと崩し俺に笑いかける。高校の時と変わらない無邪気な笑顔で体ごと俺の方へ向き、久々の再会を心から喜んでる様子に、俺もホッとして嬉しくなった。
「うんうん! 元気だよ。秀は? てか……秀、かっこよくなったなぁ~……なんか顔変わった。いや、変わってないんだけど……なんつーか。いい感じ。髪の毛伸びたからか?」
「え? そう? ありがと。潤君こそ、……うん。かっこよくなった。また更にデカくなってない?」
「おうおう。卒業してから背伸びたよ。いつまで成長期なんだっつーのな?」
「マジっすか。俺に分けてよその成長ホルモン」
「あははは! いや……秀はそんくらいでいいよ。可愛いじゃん。雰囲気に似合ってるよ」
相変わらず軽い調子で悪気なく放たれる言葉。高校の時からなにも変わらない。悪気も無ければ意味もない言葉。それが俺には、とっても鋭利でグサグサとささるんだって。
そんな事、潤君は知る由もないんだけど。
俺は昔と同じように、潤君の言葉をサラリと流していく。
「えー、それどんな雰囲気よ」
「あははは。それよりさ、秀は今なにやってんの?」
なんとなく言葉を濁すような潤君。その理由が気になる。……けどミラクルの再会を前にした今、俺にとっては些細な事だった。
最初のコメントを投稿しよう!