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「俺はねぇー、なんと念願のゲーム作っちゃってます。潤君は?」
「おお! すげー! 秀、ゲームマニアだったもんな! 極めたな! 俺は、商社に勤めてんだよ。日々、営業で大変だよ」
「へー、営業かぁ~。ノルマとか大変そう。でも、案外向いてるかもね。だって潤君人付き合い上手いし、男前だしね」
潤君は何故か苦笑いした。俺があんまりにも食いついたせいだろうか。照れくさいのかな?
「スーツでビシッと決めてる割には肉体労働だし、電話一本でアレ持ってきてくれ。とかバンバン言われるし、靴底がすり減るのも早いよ? まぁ、どんな仕事だってキツイ部分はあるからしゃーないけどねぇ。でも、第一志望で入りたい会社には入れたんだよ。夢はでっかく支社長とか?」
「おお! マジか! そりゃデッカイな! じゃあ俺は天下のドラクエやファイナルファンタジーに次ぐ名作作ってそんでもってシリーズ化してバンバン儲ける!」
「おー! いい! その夢いいねぇ! お互い頑張ろうぜ!」
潤君は俺の肩をバンバンと叩いて笑った。
「はぁ~……なんか、うん。信じられないな」
どこか寂しげに呟き、フッと笑って川へ視線を向ける潤君。やっぱ相変わらず絵になる男だよ。ほんと、変わってない。潤君は何かを思い出したように俺を見た。
「夢といえば。そうそう。ちょっと前に夢に秀が出てきた気がする。正夢だったのかな」
「え? 何それ、恋焦がれちゃってるみたいじゃん」
軽く笑って冗談を言いながら、やっぱり俺は胸の高鳴りをよいしょよいしょと上から押さえ込んだ。
「うん。きっと無意識に会いたがっていたのかも。だから、夢に出てきたんだね」
うひゃ!
俺の言葉を笑い飛ばすどころか、まさかの肯定で返して来ちゃった潤君。
どーゆー事っすかそれ!
しばしビックリとドキドキで固まる俺を、ジッと見つめる潤君。その目がちょっと潤んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
潤君はまるで、口説くみたいに、熱心な口調で言葉を続けた。
「積もる話がいっぱいあんだよ。夕飯終わったら合流しねぇ? ここ来る前に飲み屋あったよね?」
「う……うんうん」
らしくもなくタジタジしちゃってる俺は、なるべく普通になろうと必死でコクコク首を縦に振った。
潤君は同じように「うんうん」と嬉しそうに頷いて、立ち上がった。
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