第2章

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「よしっ! じゃ、そだな。お開きになったら連絡って……携帯変わった? 番号」  「あー、結構代替わりしちゃったから。じゃぁ、はい。よろしく」  俺は携帯を赤外線通信モードにして潤君の方へ向き直した。 「ごめん。俺、携帯置いてきちゃった。戻ってやろう。だいぶ薄暗くなってきたし」 「うん。そだね」  一人で来た道を今度は二人で戻る。  戻る間も高校時代の友人の名前がいくつも飛び出し思い出話に花が咲いた。  あいつは結婚したとか、あいつはバツ一だとか、あいつはフリーターなんかやってるそうだ。とか。  相変わらず潤君は友達がいっぱいの様子。今でもみんなと繋がっているあたり、流石だなって思う。潤君は俺とは違ってマメだからね。  自然消滅なんて言っても、結局は俺の方に原因があったんだろうな。  さっきも、番号変わった? って聞いてきたって事は、もしかしたら、潤君のアドレスには俺の番号がまだ今も入ってるのかもしれない。高校生の時の俺の番号が。  嬉しいような、申し訳ないような……切ないような。なんか、複雑だよ。  旅館へ到着し、電波状況があまりよろしくない中、無事アドレス交換も済ませ、宴会場のある本館へと向かった。  本館に入ると正月みたいな琴の音色が流れていた。仲居さん達が大勢忙しそうに行き来している。さっきは女将さんと、仲居さん三人しか姿見なかったけど、案外いっぱい働いてるんだね。それともあれかな? 夕飯時だけのパートさんなのかな?  宴会場は二つに分かれていた。手前に『○○○○株式会社御一行様』の名前が張り紙されてある。 奥の方に同じような張り紙がしてあるから、あっちが潤君の方なんだろう。 「あら? やっぱそっち?」 「おお、俺あっち。じゃ、後で!」 「じゃぁね」と笑い合ってバイバイし、お互いお隣同士、小上がりになってる所でスリッパを脱いで襖を開けた。  大宴会場の中も襖で仕切られてあって、隣からも人のザワザワした気配がする。そこから、「あ、来た来た。水石どこ行ってんだよ」って声がなんとなく聴こえて来た。  肩を竦め小さく笑っていると、こちらからも俺を呼ぶ声がした。 「佐伯さーん」
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