3人が本棚に入れています
本棚に追加
「”殺す”か…。俺は、もう、誰も…。
…でも、死にたくない。まだ、死にたくないんだ!」
一方、少年のほうもゆらりとこちらに対面する。その両手に握られているのは、血で真っ赤に染まっている二つのナイフ。軽装備ではあるものの、全く油断できない。なにせ何十人も既に屠ってきているうえに、幾度となくヴォルスを苦しめてきたのだ。おまけにこちらは連日最前線に立ち続けていて消耗しきっている。
口ではああ言ったが、如何せん相手が相手。ファルナが警告したように、現状でどうにかできる確率は薄いだろう。それはファルナや部下達が加わっても対して違いはない。ゆえにファルナ達とは別れたのだ。少しでも仲間達と合流するための時間を稼ぐために。
ただ、ヴォルスも簡単には負けるつもりはない。オトナにはオトナの意地というものがあるのだ。生意気なコドモにそれを見せてやる。
「たしか、おまえの本名は“セプテム”…ったっけか? 来世では友達できるといいな」
「…うるさい」
二人は暫し睨み合うと、勢いよく疾走する。
影が交錯し、激しいがどこか空虚な衝突音が周囲に鳴り響いた――。
最初のコメントを投稿しよう!