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(ま、どうせ後でいけ好かない教師陣が、俺を哀れんで無理矢理誰かとあてがってくれるさ)
こっそりとため息を吐いた。その時である。
「…あ、あの~。もしかして、今お一人ですか?」
「っ!? は、はいはいっ! お、俺一人です!」
やや控えめな声が背後からかかった。内心ほっとした気持ちを隠せないままそちらを振り向く。
「よかったぁ。私も一人なんです。もしよかったら私と一緒にペアを組ませてもらえないでしょうか…」
「こちらこそよろしく! …えっと、おまえの名前はたしか…なんだっけ?」
「カノン・ジュヴェールですよ。忘れっぽい転入生のエル・グロリアさん」
悪戯っぽくそう言うと、鈴の音をコロコロ転がすように笑う。そこでやっと思い出した。
スラリとした健康的な肢体に、人懐っこい小動物を思わせるような愛くるしい容姿。まるでプリズムのように輝く白銀の艶やかな髪は、後ろで一つに束ねられており、思わず目を引いてしまうほど可憐である。そしてその両目の大きな碧眼は、異質な者(自分のことだが…)と初めて相対するせいか緊張と不安で少し揺れている。
カノン・ジュヴェール。性格は気丈かつ大らか。容姿は抜群。出るとこはちゃんと出ている。女はともかく男がいつまでもほっとかないと思うのだが、どこかクラスの者達とうまく馴染めていないような、浮世離れしているような、そんな子である。
端的に言うと、ぼっち予備軍だ。
「それにしても心霊と仮契約か~。おまえこの課題でよく俺と組む気になったよな」
「え?」
「名前知ってるぐらいなんだから、俺がクラスの中でなんて呼ばれているか知ってんだろ? 『疫病神』だぞ」
「別に気にすることはないと思いますよ。ただのジンクスですし。少なくとも私は気にしません」
教師の説明を聞きながらの凛とした返答に、思わずおぉと仰け反る。
なんていい子なんだろう。『疫病神』というあだ名は決して蔑称などではなく、“ほとんど事実だというのに”。
にもかかわらずこの子がぼっち予備軍とは、世の中中々分からないものである。
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