第一章 『疫病神』と『寝取られのカノン』

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 (ま、どうせ後でいけ好かない教師陣が、俺を哀れんで無理矢理誰かとあてがってくれるさ)  こっそりとため息を吐いた。その時である。  「…あ、あの~。もしかして、今お一人ですか?」  「っ!? は、はいはいっ! お、俺一人です!」  やや控えめな声が背後からかかった。内心ほっとした気持ちを隠せないままそちらを振り向く。  「よかったぁ。私も一人なんです。もしよかったら私と一緒にペアを組ませてもらえないでしょうか…」  「こちらこそよろしく! …えっと、おまえの名前はたしか…なんだっけ?」  「カノン・ジュヴェールですよ。忘れっぽい転入生のエル・グロリアさん」  悪戯っぽくそう言うと、鈴の音をコロコロ転がすように笑う。そこでやっと思い出した。  スラリとした健康的な肢体に、人懐っこい小動物を思わせるような愛くるしい容姿。まるでプリズムのように輝く白銀の艶やかな髪は、後ろで一つに束ねられており、思わず目を引いてしまうほど可憐である。そしてその両目の大きな碧眼は、異質な者(自分のことだが…)と初めて相対するせいか緊張と不安で少し揺れている。  カノン・ジュヴェール。性格は気丈かつ大らか。容姿は抜群。出るとこはちゃんと出ている。女はともかく男がいつまでもほっとかないと思うのだが、どこかクラスの者達とうまく馴染めていないような、浮世離れしているような、そんな子である。  端的に言うと、ぼっち予備軍だ。  「それにしても心霊と仮契約か~。おまえこの課題でよく俺と組む気になったよな」  「え?」  「名前知ってるぐらいなんだから、俺がクラスの中でなんて呼ばれているか知ってんだろ? 『疫病神』だぞ」  「別に気にすることはないと思いますよ。ただのジンクスですし。少なくとも私は気にしません」  教師の説明を聞きながらの凛とした返答に、思わずおぉと仰け反る。  なんていい子なんだろう。『疫病神』というあだ名は決して蔑称などではなく、“ほとんど事実だというのに”。  にもかかわらずこの子がぼっち予備軍とは、世の中中々分からないものである。   
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