夢か恋人か

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「忘れ物はありませんか?」 「ないよ」 今日は主任の家にお泊りだ。 二人で夕食を食べて、お風呂に入った。 今は、手を繋いでベッドに寝ころんでいる。 「明日は早起きですね」 「だな…」 会話が続かない。 何を話していいのか分からないのだ。 何を語っても、何をしていても、明日から主任は傍にいない。 そう思うと自然に熱いものがこみ上げてくる。 笑顔で送り出すって決めたのに、熱いものはどんどん上に上がってくる。 笑って見送りたいのに…。 こんな時に、泣きたくないのに…。 「明…?」 「うん?」 返答した声は、完全なる涙声。 これじゃ、主任に泣いていることがばれてしまう。
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