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準備が終わると同時に戦争が始まった。予定通り二日後に攻めてきた。最初の方は仕掛けたトラップによって始末することができたが、後半はそうはいかなかった。徐々に進行され始めている。武器を振るいながら敵の兵を倒す。一撃一撃を叩きこむがあまり数が減らない。それでも戦い続けた。味方は倒れ続けている。
「……くそっ」
状況は明らかに劣勢。シルナに関してはクロスボウの矢が早くもつき、倒した敵の武器で戦っている。慣れない武器でうまく戦えていない。
「ぐっ…………守れないのか……」
押され続けているうちに自分が死にそうになっていた。
「レジスタンスのリーダー、最後に言い残すことは?」
「私達に必要なのは戦争じゃない!一つの平和だけだ!これ以上血を流して、人を殺してなんになる!」
聞こえているかどうかわからない。ただそれでも叫び続けた。
「平和を求めるのに殺し合いが必要か!?人を殺して手に入れた平和なんて、後悔と悲しみのある嘘の平和だけだ!!そんな平和がほしいっていうのか!皆は!」
小さなざわめきと金属の音。さっきまで聞こえていた叫び声に怒声。そして悲鳴。今はどれも聞こえない。
「今ここにいる皆は最終的に何のために戦ってる!?平和だろ!!敵を倒して平和をつくる。それは皆変わらず同じ意見だ!でも違う!」
伝わらなくても叫ぶ。
「同じ平和を求めるなら、全員同じように平和で幸せな世界をつくろうじゃないか!!この意見が間違ってるなら今すぐに私をその剣で貫け!!」
目をつむり声を上げる。耳に入る音はざわめき。
「同じ平和を求めるのであれば今すぐに武器を捨てろ!」
自分の声に答えるかのように増える金属の音。
「私たちは人種や存在は違うけれど、この世界に住む人で魔族だ!」
これが避けられない問題だというのはわかっている。
「今はまだきれいごとかもしれない。でもいつかこのきれいごとが実現する世界を私は作りたい!だから…お願いだ!戦うのをやめてくれ!!これ以上……無暗な戦争で失う命を…その死んだ人の家族や愛人の悲しむ顔を……見たくないんだ…!!」
静まる世界に涙ぐんだ声。
「…作ろうか。あんたの言う平和な世界とやらを」
さっきの殺気は消えていた。
「お互いに手を取り合って、笑って行ける世界を」
長くに渡った戦いに、今終止符が打たれた。
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