第二章

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「うん♪」 それが、一体何なのか、彼も知らない。 「うん♪うん♪」 流線型の、丁度砲弾の様なフォルム。 それに手足が付いて、辛うじて人型の体裁を整えてはいる。 ご丁寧に、人肌に近い色をしてもいる。 が。 「うん♪うん♪うん♪」 通常なら頭部に当たる部分のみが顔では無く。 下弦の弧を描く両目、厚みのあるおちょぼ口は、胴と言える部分に付いている。 いや、言うなれば”楕円形の顔面に四肢が生えている”が正しいかも知れない。 明らかに、人間では無い。 「うん♪」 「うん♪」 「うん♪」 それらは大挙して、彼の周りを踊るかの様に手足を奇妙に振り上げ、振り下ろしつつ取り巻いている。 「うん♪」 「うん♪」 「うん♪」 笑顔、としか表現出来ない顔で。 彼への全肯定、或いは揶揄とも取れる声を発しつつ。 「・・・」 彼にとって、”それ”は少々うっとおしいが、無視を決め込んでいれば危害を加える存在では無いので、そのまま放置している。 とは言え。 ”無視を決め込まなかったら”どうなのか、と言う事自体、彼は知らない。 無視以外の行動で、彼(?)等に対処した事は無いからだ。 「うん♪うん♪」 「うん♪」 「うん♪うん♪」 「・・・」 どちらにしろ、”それは彼以外の人間には見えていない”。 相手にするのも馬鹿馬鹿しい、と、胸の裡の苛立ちを押さえつつ、彼は自前の米を満載したカートを引いて、歩を進めていた。 「ん。」 その時、突然。 その、周囲の”賑やかし”が消えた。 ひゅう、と接近しつつある、風切り音。 「・・・」 彼はそっと目を閉じる。 飛来した”それ”は・・・ 彼に到達する、数mm手前でぴたりと止まり。 やがて、重力に従い、落下した。 こん、からから・・・ 陽の光を反射して輝きながら転がって行くそれは。 金色のライフル弾。 「ふん。」 物陰から、黒系のジャケットとネクタイ、スラックスに身を包んだ男が現れる。 眼差しこそ険しいが、面差しは彼に何処と無く似ている。 「また、失敗か。」 「やあ。」 男に対し、彼は。 にこやかに挨拶を向けた。 「二日ぶりだね、”兄さん”。」
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