第二章

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「ゆ・・・融合?って・・・」 金髪は、未だ自失の態で、目を見開いたまま。 「つまり、こいつの。」 男は、少女の頭をぽん、と・・・ 押さえたつもりだが、その掌に伝わる感触は”ねちょり”と表現した方が正しい。 「作り上げた”幻想”と合体して、君自身が妹の”幻想”になった、と言う訳だ。」 「え・・・じゃあ・・・」 「まだ消えずに済むって事だな。こいつが望まない限り。」 「・・・!」 安堵、だろう。 金髪は、ぺたりと尻餅(もはやその部位を”尻”と呼んで良いのかどうかは定かではないが)を付き、後ろ手でその身を支え、呆けている。 「・・・」 男は、その姿を眺めつつ、考えていた。 先程の蛇の行動は、ケダモノの本能としての狩りかと最初は思ったのだが。 考えて見れば、あれは少女の”思念”の”具現化”した物だ。 真っ当な生き物では無い。 当然、空腹を覚える等と言う事は有り得ないし、食欲等とは無縁の筈だ。 特に、少女はそれを、”自分の遊び相手”として”創造”したのだろう。 他者に危害を加える理由は全く無い。 『と、言う事は・・・』 蛇は、金髪を救う為、その行動に出た、と言う事になる。 『それこそ、有り得るのか?』 だが、男の疑問に答えられる者は、先ずいない。 彼等一族の能力、”TRICK WORLD”は殆どの部分が未解明なのだ。 その研究をし、人工的に開発する研究を行っていた組織は存在したのだが 「・・・」 それは、数か月前に”壊滅した”。 『・・・もう考えるのは止そう。』 頭部を打ち抜かれ、倒れ行く者の姿の記憶が喚起され、男はそれ以上を脳裡に浮かべぬ為に、心を閉じた。 「あははは!」 その時、突然。 青年の笑い声が、場を満たした。 「どうしたの?小兄(ちいにい)ちゃん。」 少女がその視線を辿って 「きゃはは!なにこれぇ!?」 自分の兄と同じ様な嬌声を挙げる。 「・・・!」 そして、男も同じ物を目撃し、絶句した。 父の”思念”によって作り出された”世界”は、既にほぼ崩壊している。 その場は、普通の民家の六畳間と化した。 いや、”戻った”と言うべきか。 その、部屋の半分を埋め尽くし。 ”それ”は、そこにあった。 まるで”目覚め”の時を待ち、”眠って”いるかの様に。
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