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「き、貴様ぁッ!そのまま動くなぁッ!」
無能警官め、と心の中で毒づく。
『来るならもう少し早く来いってんだ!』
そう。
今、俺の周りで倒れ伏してるこいつ等が。
俺を取り囲んで金を要求していた、その時に。
「・・・」
が。
今現在の状況では、どう見ても俺が”加害者”で、こいつ等が”被害者”だ。
こいつ等がどんなクズ野郎共だったにせよ。
そして。
よしんば俺に”力”の制御が出来たとして、それを行使しない事を自らの意志で選択し、こいつ等の身の安全を計った場合。
俺の方がどんな目に遭うかも解らなかった、と言ってもだ。
いや。
こいつ等の姿は、街で何度か見掛ている。
理不尽な要求を面白半分に道行く人々に吹っ掛け、それに異を唱えられると・・・
嬉々としての、暴力による蹂躙。
その徹底ぶりは、目を覆うばかりだった。
下手をすれば、命の危険すらある。
”どんな目に遭うか解らなかった”ではない。
火を見るより明らかだった。
「て、抵抗するなよッ!」
俺に銃口を向けつつ、手錠を取り出す警官。
俺は自分の身の安全を確保しただけだ。
何も悪く無い。
悪いのは・・・
運と、警官のタイミング。
そして。
神クソッタレ様の底意地だ。
「・・・!」
俺は捕まりたくなかった。
今の結果は、こいつ等の自業自得だ。
が。
ざっと見て、息のある者は一人もいない。
いや。
形状的に息がある方が不思議、とも言える。
良くても”過剰防衛”・・・
下手をすると、俺が一方的な悪人にされ兼ねない。
だから・・・
『・・・駄目だっ!』
その欲求を叶える為、”さっきと同じ様に””力が俺の内部で鎌首をもたげる”。
『警官まで殺しちまったら、俺はっ!』
咄嗟の思い付きだった。
”力”の発動は制御出来ないが。
精神を集中すれば、”その向かう対象”くらいは、選択出来る。
「う、動くなと言っとろうがぁッ!」
たかが眼鏡を外しただけで、酷い慌て様だ。
まあ、こいつ等の状況を見れば、それも仕方ないかも知れない。
「・・・っ!」
俺は警官に向かう筈の”力”を、手の中の眼鏡に転嫁し
「うわぁッ!」
眼鏡の暴発に、警官が吹っ飛ぶ。
俺はその隙に、逃走した。
『諦めねぇ・・・』
目尻に光る物を、拭いもせず。
『俺は”普通の人間”として生きて行くんだ!』
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