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「おい!おい大丈夫か!?おい!」
「ん・・・うぅ・・・」
その一に身を揺すられ、その二は眉間に皺を寄せ、ゆっくりと瞼を開けた。
「・・・何だよ・・・」
未だ、外は暗い。
夜明けにはまだ間があるようだ。
「だ、だって何かうなされてたから・・・」
「・・・」
「・・・また、昔の夢でも見ていたのかい?」
「・・・ああ。」
顔は逸らしつつも。
それには素直に肯定する。
「君は”エリート”だったもんね。」
その一が苦笑しながら溜息混じりに呟く。
「僕なんか、”能力”開発の為、肉体を一旦バラバラにしたってのに。あの時はまるで、肉団子みたいだったよ、僕の身体。」
「・・・」
「君みたいな、生まれつきの能力者が羨ましかったよ。」
エリート。
羨ましい。
その二は、自分をそう呼んでもらえる組織に見出して貰った事を、感謝していた。
親でさえ、化け物扱いし、腫物・・・いや、爆発物にでも触れるような態度で接していたと言うのに。
彼を受け入れた秘密組織”バステリオン”は、その能力を”素晴らしい才能”と評してくれた。
その二はやっと、自分が生きる世界を見付けた気がしていた。
それだけに。
「畜生・・・」
それを壊滅に追いやった人間が、許せなかった。
「”総統”を狙撃した野郎・・・ぶっ殺してやる!」
「まぁ、バステリオンも世界征服だとか、あんまり褒められた事はしてなかったしね。」
「お前っ!」
怒りを湛えた眼差しを、その一に向ける。
「・・・でも、確かに・・・」
対してその一は、自分の身体を掌で触れつつ見下ろした。
「こんな身体になっちゃった僕等が生きて行ける場所は、あそこしか無かったんだけどね・・・」
「・・・」
彼等の一見ナイロンの全身タイツ然とした姿は、実は本性、皮膚である。
”能力開発”によって、その姿は変質させられていたのだ。
「それにしても・・・」
ふと、その一が傍らで鼾をかいている”先輩”に目を移す。
「この人は自分を”落ちこぼれ”だなんて言うけど、さ。」
彼女は、頭部丸々、その外皮に覆われていない。
顔と両サイドで縛った頭髪は人間のそれ、そのままだ。
「・・・」
その二もまた、彼女のそれを暫く凝視していた。
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