第三章

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「よせやい。」 数時間後。 三人は、朝のコーヒーを啜りつつ、車座に座っていた。 とは言え、それも三人で一本の缶コーヒーを分け合っている様な状況ではあるが。 「俺は正真正銘の落ちこぼれ、完全な変身も出来ていない半端者さ。」 「そんな事無いです!だって先輩は・・・!」 「大体よぉ。」 その一の言葉を遮り、彼女は後ろ手を枕にごろりと横になった。 「生まれつきの能力者でも無かったし。」 「今となっちゃあ、別に自慢出来る事でもねぇけどな。」 「ボーリングのレーンとピンに突っ込んで本格的な能力開発する度胸も無かった。」 「肉体改造装置ですよ、あれは。確かに似てたけど。」 「俺なんかより、お前達の方がよっぽどすげぇぜ。」 「だけどっ!」 「先輩、三年も生き延びたんだろ?歴戦の兵士ってヤツじゃねぇか。」 非合法組織故の、公的組織による武力弾圧、鎮圧。 能力の素養を見込み、拐取して改造手術を行った相手からの復讐。 バステリオンは、常に戦闘状態にあったと言える。 特に、後者。 その中でもバステリオン最高傑作と称された改造体。 彼による活動の阻止、組織そのものに対する攻撃。 幾度と無く、大打撃を被っていた。 彼等の様な下っ端戦闘員が、一年以上生き延びる事すら稀と言えた。 「・・・運が良かっただけさ。」 「・・・」 「・・・」 しかし。 二人は、知っている。 前述の、改造体。 後に自ら”サンライザー”と名乗り、ヒーロー気取りで組織と対抗した存在。 彼を襲撃した、特に戦闘能力が高い”怪人”を先頭とした多数の戦闘要員。 その戦闘により、一団はほぼ壊滅状態となっていた。 その時。 彼女はサンライザーに単身、突っ込んで行ったのだ。 駄目だ。 逃げろ。 敵いっこない。 まだ息のあった戦闘員達は、口々にそう叫んだ。 が。 彼女の応えは。 「・・・あの時の戦闘で。」 その一が、コーヒーの最後の一滴を煽りつつ。 苦笑と共に呟いた。 「僕達二人を含めた、数人の戦闘員が生き延びたのは・・・先輩のお蔭です。」 「結局、負けちまったけどな。」 お前達が言った通りによ、と、欠伸を噛み殺しつつ言い放った彼女は。 程無く寝息を立て始め、二度寝を決め込んだ。
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