第三章

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「確かに、先輩の力は全然大した事ねぇよな。」 「・・・」 その二は、散々辛酸を舐めて来た生い立ち故か、口が悪く、世の中を斜に見た様な物言いをする。 「・・・だからこそ、逆に凄ぇよ、あの人は。」 だが。 それに関してだけは、素直に認める口を利く。 「俺達が束になっても敵わないサンライザーに、たった一人で突っ込んで行くんだぜ?信じらんねぇよな。」 「うん。それに・・・」 そして。 その一にとっても。 「僕達と違って変身解除出来るあの人は・・・普通の人間としてやって行ける筈なのに・・・」 彼女は、ある意味での崇拝の対象だった。 「今も僕達に付き合って、こんな暮らしを続けてくれてる・・・」 「・・・」 二人は、目深に被った帽子とトレンチコートで顔を隠しつつ、路地裏を歩いている。 先日のその二の、”ゴミ捨て場から拾った物を転売する”と言う方法が、彼等にとって最も効率的な”食って行く手段”であると結論付けた二人は、今日もゴミ漁りに出掛けたのだ。 「・・・っと。」 「ん?何?」 「人だ。」 隠した顔。 廃棄物の拾得。 姿にしても行動に於いても、あまり人目に付きたくはない。 路地の交差する一角で、二人は物陰に身を隠し、通り掛かった青年を遣り過そうとした。 その時。 ひゅう。 ・・・ かん。 ころころ・・・ 青年の元に小さな物体が飛来し。 その頭部、寸前で止まり。 地に落ち、転がる。 「だから兄さん。無駄だって。」 「ま、一応仕事なんでな。何もせずに過ごしてる訳には行かない。」 電信柱の蔭から現れた男が、苦笑しつつ青年と合流した。 その二人は、そのまま肩を並べて歩み去って行く。 「・・・何なんだ?今の。」 その一は、建物の蔭から顔だけを出して、その背中を見送っていた。 「兄弟みたいだったけど・・・ん?」 その二は、その場にしゃがみ込んでいる。 「どうした?」 「・・・これを見てみろ。」 その二の指には、一発の銃弾が抓まれている。 「ライフル弾?」 「ああ。しかも・・・」 その二の口調は、鋭い物に変わっている。 「”薬莢が付いたままの”な。」 「それって・・・!」 「・・・」 そして、その視線は。 二人の背中へと向けられた。 「”総統を狙撃した弾”と、同じだ。」
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