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「確かに、先輩の力は全然大した事ねぇよな。」
「・・・」
その二は、散々辛酸を舐めて来た生い立ち故か、口が悪く、世の中を斜に見た様な物言いをする。
「・・・だからこそ、逆に凄ぇよ、あの人は。」
だが。
それに関してだけは、素直に認める口を利く。
「俺達が束になっても敵わないサンライザーに、たった一人で突っ込んで行くんだぜ?信じらんねぇよな。」
「うん。それに・・・」
そして。
その一にとっても。
「僕達と違って変身解除出来るあの人は・・・普通の人間としてやって行ける筈なのに・・・」
彼女は、ある意味での崇拝の対象だった。
「今も僕達に付き合って、こんな暮らしを続けてくれてる・・・」
「・・・」
二人は、目深に被った帽子とトレンチコートで顔を隠しつつ、路地裏を歩いている。
先日のその二の、”ゴミ捨て場から拾った物を転売する”と言う方法が、彼等にとって最も効率的な”食って行く手段”であると結論付けた二人は、今日もゴミ漁りに出掛けたのだ。
「・・・っと。」
「ん?何?」
「人だ。」
隠した顔。
廃棄物の拾得。
姿にしても行動に於いても、あまり人目に付きたくはない。
路地の交差する一角で、二人は物陰に身を隠し、通り掛かった青年を遣り過そうとした。
その時。
ひゅう。
・・・
かん。
ころころ・・・
青年の元に小さな物体が飛来し。
その頭部、寸前で止まり。
地に落ち、転がる。
「だから兄さん。無駄だって。」
「ま、一応仕事なんでな。何もせずに過ごしてる訳には行かない。」
電信柱の蔭から現れた男が、苦笑しつつ青年と合流した。
その二人は、そのまま肩を並べて歩み去って行く。
「・・・何なんだ?今の。」
その一は、建物の蔭から顔だけを出して、その背中を見送っていた。
「兄弟みたいだったけど・・・ん?」
その二は、その場にしゃがみ込んでいる。
「どうした?」
「・・・これを見てみろ。」
その二の指には、一発の銃弾が抓まれている。
「ライフル弾?」
「ああ。しかも・・・」
その二の口調は、鋭い物に変わっている。
「”薬莢が付いたままの”な。」
「それって・・・!」
「・・・」
そして、その視線は。
二人の背中へと向けられた。
「”総統を狙撃した弾”と、同じだ。」
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