第四章

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「せん・・・ぱ・・・」 「・・・」 目を丸くして、固まるその一。 ふい、とそっぽを向くその二。 「俺ぁ、好きでバステリオンに入ったんだ。」 ふん、と鼻息荒く。 言葉を継ぐ、”先輩”。 「つまり、俺の方が人間社会ってヤツを捨ててやったんだよ。そこ勘違いすんな。」 「・・・」 「・・・」 「金と権力持ってる奴等の都合で世界回して、その下で小狡く立ち回った器用な奴ばっか甘い汁吸って、嘘と欺瞞しか無ぇ世の中なんかよぉ。土下座して頼まれたって戻ってやるもんかよ。」 「で、でも、せんぱ・・・」 「大体よぉ!」 反論は許さない、とでも言うのか。 その一の言葉は、それに倍する音量の”先輩”の声に、掻き消された。 「見た目やら人に無ぇ能力やらでお前等を爪弾きにするような、ケツの穴の小せぇ社会なんざ、願い下げだっつーんだよ!」 「・・・!」 「・・・」 後輩二人は、言葉も無く、その場に立ち尽くした。 「・・・兎に角、今日は帰ろうぜ。」 一分程の沈黙の後。 ”先輩”はくるりと踵を返した。 「・・・」 その一が、その二の横顔をちらと伺う。 「・・・」 その二は、それと意識しなければ解らぬ位に微かな首肯の後、”先輩”の背中を追った。 その一が、それに慌てて続く。 「そ、それにしても先輩!」 沈黙、無言の業に耐え切れず、その一が殊更陽気に・・・ のつもりで、ただただ声を大にしただけの言葉を投げ掛ける。 「よ、良く俺達の居場所が解りましたね!」 「嘗めんな。」 ”先輩”の言葉はぶっきら棒だが、口許には笑みが浮かび始めている。 「俺だって”能力”の訓練は受けたんだ。お前等の居場所くらい、探る程度は出来るっつーんだよ。」 「さ、流石ですねぇ!やっぱり先輩は凄いや!」 「嫌味か手前ぇ。」 「あ、い、いや・・・」 確かに、改造手術を受けたその一や、生れついての能力者であったその二の力は、”先輩”を遥かに凌駕する。 その一は、肩を竦めて縮こまってしまった。 「ま、いいや。」 ”先輩”はその姿にふふ、と笑って 「早く帰ってメシにしようぜ!」 そう、声を挙げる。 「・・・!」 「・・・」 それに至り。 二人の後輩は、食糧確保をすっかり失念していた事を思い出し、顔を見合わせた。
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