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「・・・誰?」
「玄関の鍵、掛けねーんだな。あんた。」
「あんな戸、鍵掛かってたってその気になれば蹴破れちゃうじゃない?」
「成る程。ところでよ。」
「何?」
「何だよ。それ。」
「かっこいいでしょ。」
そこで、青年は漸く振り向いた。
口には、手元のトマトジュースのパックに挿したストローが咥えられている。
出会った時と同じ、穏やかな笑みに”先輩”の身は総毛立った。
「お父さんが遺した、ロボットだよ。」
ボーリングのピン、スーパーの買い物用の籠、ちくわぶを模した円筒・・・
まるっきり、ガラクタの集まりだ。
それが。
時折、ぎ、ぎぎ、と軋む様な音を立て、関節部分と思しき部位を屈伸している。
「・・・それは?」
”先輩”は、傍らに大の字に寝転がる人型の物体を目で示す。
筋肉質の太い四肢。
太鼓腹。
全身緑色で、大きな口許からは牙が覗き、頭部には角にしか見えない二本の突起物。
「雷神様。」
「・・・らいじん?」
「巨大ロボットを動かすには、電気が要るじゃない?」
「・・・」
青年の向こう、たった今まで作業をしていたと思われる足元には、”ロボット”の一部に組み込まれた、連太鼓。
成る程、絵姿や想像上の”雷神”が背負っている様な、それだ。
時折、青白い火花がばち、ばちばち、と飛ぶ。
「滅茶苦茶だな。」
”先輩”は苦笑を禁じ得なかった。
この、寄せ集めの部品も。
その、法則無視な組み様も。
既に起動し始めているそれは、恐らく機械的な作用では無く、彼の能力に拠る物だろう。
にも関わらず、電力を供給する為、能力で”雷神”を作り出して置いて、太鼓を奪う。
支離滅裂、ここに極まれりと言う奴だ。
「ところで、そろそろ僕の質問に答えて貰えないかなぁ。」
「何だっけ。」
「何の用?」
「”俺が誰か”じゃなかったっけ?」
「覚えてるんじゃない。」
「ま、細けぇ事はいいじゃねぇか。」
”先輩”は。
挑発的な眼差しで青年を睨み。
「俺は、バステリオンの生き残りでな。」
「ふ~ん。」
気の無さそうな青年に向かって。
「バステリオンの首領を殺して、組織を崩壊させた野郎、つまり・・・」
その言葉を、叩き付けた。
「お前の兄貴を殺したのは、俺だ。」
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