終章

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「・・・」 青年は、かつて我が家であった廃墟の中、ただ立ち尽くしていた。 「何なんだよ・・・」 ”可哀想なヤツ”。 「何なんだ一体!」 ぼしゅっ! 彼がそれを狙ったのかどうか。 足元のガラクタが、粉々に砕ける。 「・・・」 ふと、自らの頬に触れる。 その手に伝わる、感触。 それは、己の皮膚では無く。 あの。 ”金髪”の。 彼の頬を、今わの際に。 優しく撫でてくれた。 その手に思え・・・ 「っ!」 ぼぼん! 今度は、明らかに狙っていない。 周囲。 瓦礫がランダムに爆ぜる。 「畜生・・・」 青年は、自分の心が何故そこまで波立つのかも知らぬまま。 ただひたすらに、苛立っている。 「僕は・・・」 ならば、どうすればいい。 「どうして・・・」 そうだ。 壊せ。 それで、この痛みは。 「・・・」 いや。 破壊ならば。 今、したばかりではないか。 なのに。 「おいっ!」 彼は。 答えを、ついこの前まで疎んじていたモノに求めた。 「いないのかっ!いるんだろっ!?」 「うん♪」 「うんうん♪」 「うん♪」 瓦礫の蔭から。 隣家の壁から。 電柱の裏から。 ”それ”が次々と湧く。 「・・・何でだよ。」 「うん♪うん♪」 「うん♪」 「うんうん♪」 が。 ”それら”は、彼の求める表情をしていない。 あの時。 言葉では無い形で。 彼の”道”を示してくれた、それではなく。 「うん♪」 「うんうん♪」 「うんうんうん♪」 ただ、彼を全肯定するような、揶揄の声。 意味の無い、踊り。 満面の笑み。 ひたすらに、馬鹿にする様な、”それら”。 「・・・お前達なんか。」 青年は。 す、と。 掌を、翳す。 「いらない。」 瞬時。 周囲が眩く光る。 「う・・・」 「ん・・・」 「・・・」 ”それら”は、塵となって消えた。 「・・・」 彼は、暫く。 放心していた。 「僕は・・・」 彼の目尻に。 「何でも壊せる・・・何でも造れるのに・・・」 一筋の、光。 「・・・何でも?」 そこで。 彼の脳裡に、一つの考えが浮かんだ。 「・・・そうだ。そうだよ。」 それが。 彼にとっての。 微かな”希望”だった。
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