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……一日中、って。
家に帰さないって……。
その言葉にただ顔を紅潮させていると、頭部にポンッと優しい掌が載った。
意外にも背の高い彼は、首を下げてあたしの顔を覗き込んでくる。
そして、
「キミの困ってる顔、可愛いね」
と呟き背を向けて、何ごともなかったかのように廊下を真っ直ぐ突き進んでいった。
からかってるの?
それとも……本気なの?
あの何もない部屋に、あたしのことを想って買った家具が置かれているの?
それをあたしが見に行ってもいいの?
本当に見に行ってもいいのなら、
勇気をもって、少しだけ踏み出してみたい。
………スカビオサ………
(失われた愛)
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