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軽めに謝る莉央。
なんで、そんなに優しいんだろう。
「…もしかして、迷惑だった?」
急に、声色が暗くなる。
顔が見えないから余計に不安がっている表情が目に浮かぶ。
「……なんでだよ。迷惑だったらわざわざこんな事言わねーよ」
「そっか…」
今度は、安心したような声がした。
柔らかくて、壊れそうな。
小さい子供のような声。
「…私、……応援してるからね…?……伊織のこと。……中学校の時からずっとずっと剣道、頑張ってるの知ってるから…」
莉央の言葉が、照れくさくて。
無愛想な俺を可笑しくさせる。
もどかしくて。
変な感じがする。
「……うん。……頑張る」
もうすぐ引退試合がある。
莉央が言ってるのは、きっとそのことだ。
うちの高校は、強い方では無いから優勝は無理だろうけど。
俺的には、良い結果を残しておきたい。
莉央の応援に応える為にも。
「…あ、お父さん呼んでるから切るね」
「悪いな。わざわざごめん」
「いいんだよ。伊織からの電話、嬉しかったよ?」
「……おう。また明日な」
「また明日ね!おやすみ」
「…おやすみ」
また機械音がする。
一定の変哲もない音。
それがやけに淋しかった。
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