手を伸ばせば

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「…ん?」 今度は、ニヤニヤなんてしてなかった。 真剣な表情に釣られて、俺も顔が強ばる。 「守ってあげなさいよ。莉央ちゃんのこと」 ねーちゃんは、フッと笑って自分の部屋へ戻って行った。 理解してる。 それくらい。 莉央の両親が共働きでほとんど家に居ないことだって。 誰よりも、俺は莉央のことを分かってあげられてる。 その時までは、そう思ってた。 ◇◇◇ 「莉央ー」 今日も、莉央を起こしに行く。 最近は面倒だから、窓から呼ぶのを止めてインターフォンへ直行している。 インターフォンを押しても。 名前を呼んでも。 莉央からの応答は、無かった。 いつもは、鍵が開いていて勝手に入って起こしに行ってた。 もちろん『もう鍵、開けるから入って起こしに来て!!』と言う莉央の要望だった。 鍵も開いてないから、先に行ったという事にしておこう。 …仕方ねえな。 なんで、先に行ってんだよ…。 連絡くらいしてくれれば良かったのに。 心の中でぶつぶつ呟きながら、少し寂しく俺は学校へ向かった。
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