手を伸ばせば

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「おーはよっ!!」 教室に入るなり、啓が俺に飛び付いてきた。 ……暑苦しい。 「やめろ…」 「やだ」 「はぁ…!?」 「嘘だって」 スルリと、俺の首に回していた手が離れる。 熱が残っているから、まだ暑苦しく感じる。 周りを見渡すが、莉央はまだ居なかった。 歩きで行ってるんだろう。 めんどくさがりの莉央にしては、かなり珍しい話だけど。 すると。 倉科がズカズカと俺と啓の間に割り込んだ。 「ちょ、彩芽。どーした」 「うるさい!!バカ啓!!」 倉科は、凄く不安そうな顔をしている。 なんで?と、疑問が募る。 「……早坂」 「…何?」 どうやら、用があるのは俺らしい。 「……莉央と一緒に来てないの?」 …莉央? 「…今日は、来てないけど。アイツ、家にいなかったから」 更に、倉科の表情が曇った。 ………どういうことだよ。 「………莉央…出ないの。電話してもメールしても……」 「え?」 変な胸騒ぎがした。 普段なら、こんな事なんか信じない。 「………」 だけど。 莉央に何かあったらと思ったら。 不安で仕方なかった。 そして、気づいたら俺は。 さっき来たばかりの教室から飛び出した。
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