手を伸ばせば

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「伊織…!?」と、啓が俺を呼ぶ。 今は、そんなの気にしてられない。 校門を抜けて。 俺は、無我夢中で走った。 宛もないくせに。 莉央に電話してみるけど、倉科の言う通り電話に出る気配は無かった。 ……どこにいるんだよ。 虚しく、コール音だけが残って。 もっと不安にさせる。 …莉央。 ……莉央。 『何処に隠れてたんだよ』 『ふふっ。えっと…』 ふいに思い出した。 莉央が、よく行く場所。 きっと。 莉央は、そこにいる。 俺と莉央の誰にも教えてない秘密の場所。 「………いた」 やっぱり、そうだった。 河原の草が茂っている所で莉央は、制服姿で川を見つめていた。 この河原が、俺らの秘密の場所。 「莉央」 「え…?」 傍に行くと、莉央は目を丸くさせながら俺を見た。 まるで"なんで居るの?"って言ってるみたいに。 「……なんで…伊織が……が、…学校は……?」 ビックリしている莉央。 声がやけに震えているように聞こえた。
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