手を伸ばせば

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#守ってあげたい ◇◇◇ 「…なんかあったんだろ。言えよ……」 涙を拭った左指は、熱を帯びてる。 莉央は、俯きがちに俺を見た。 「……ん…」 そして、小さく口を開いて話し始める。 「……昨日ね、………お父さんが珍しく早く帰ってきたの。……ちょうど、………伊織と電話してた時……。…私……嬉しくて舞い上がってたら……話があるってお父さんに言われたの……」 「………お母さんと離婚するって……」 もっと涙を溢す莉央。 ただ静かにポロポロと溢していく。 「……引っ越ししたら…また3人で暮らせるって……思ってたんだけど……駄目…みたいだね…」 中学の時、なんで引っ越して来たのか聞いたことがあった。 『なんで引っ越してきたわけ?』 『んー。成り行き?』 『嘘つけ』 『あ、バレた?お母さんが単身赴任で海外に住むことになったから、お父さんと2人じゃ都会には馴染めないなって思って。お母さんがこの街で生まれたから引っ越そうかってなったの』 『ふーん』 『いつか、また3人で暮らしたいんだー』 笑いながら、そう言ってた。 誇らしげに。
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