手を伸ばせば

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そんな事、言われると思ってなくて。 思わず「……うぇ?」と間抜けな返事をしてしまった。 それに対して啓は、爆笑してくる。 「笑うなよ」 「いや~。伊織の返事がダサすぎて……」 「黙れ」 「はいはい~。でもさぁ…」 急に啓の表情が真っ直ぐなものに変わる。 こういう切り替えが意外に上手い。 啓は、バカそうに見えるけど。 ホントは誰よりも周りの空気に敏感で、その緊張を解してくれる。 「莉央ちゃんを笑顔に出来るのってさ、伊織だけだよな」 俺の机に軽く腰掛けながら、窓の方を見つめる。 そして。 ゆっくり俺を見る。 「もう分かってんじゃない?」 休憩中の教室は、うるさいハズなのに俺には啓の声しか聞こえなかった。 きっと、それは。 意識してるから。 啓の言葉の意味を理解してるから。 「自分の気持ち」 淡々と、英単語みたいに放たれる言葉。 それが耳に残って。 頭の中でリピートされる。 何度も何度も。 「……好きなんだろ?莉央ちゃんの事」
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