手を伸ばせば

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◇◇◇ 「あ、伊織じゃん」 教室に入ると早速、腐れ縁の啓に話しかけられる。 普通は「おはよう」が一般的だろ。 「なに」 「素っ気な。ひど」 「お前が可笑しいんだよ、バカ」 「更にひど」 少し拗ねる啓。 それを見ながら、莉央と倉科が笑う。 「確かに啓はバカだもんね」 倉科が突っ込みながらもっと笑い出す。 「うっせえ!!」 「このままじゃバカは夏休みないよー」 そうだ。 あと数週間したら夏休みだ。 「今年も花火大会…」 「今年も花火大会行くよな?」と莉央に言おうとした時。 莉央が誰かに呼ばれた。 「ごめん、後で聞く」 小走りで向かった先には、莉央の隣の三吉 新が居た。 参考書か教科書か。 俺には、さっぱりの書物を手に取って楽しそうに笑ってた。 3年だからきっと受験のことだろ。 自分的には、気が早いと思う。 最近は、こんなことがよくある。 莉央と三吉が話している所をよく見る。 三吉は確か。 バスケ部で頭もそこそこ良い。 もしかしたら莉央より良いかも知れない。 ……なんて。 俺には関係無い。 とか思っていると、担任が「席につけ」と促す。 その瞬間、始まりのチャイムが鳴り響いた。
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