出会い

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翌日。 起きて、身支度をして、弁当を作って。 いつも通りの朝を迎える。 この学園に通っているなら弁当なんかいらないと思うけど、俺は別。 特待生として通っているので俺の家は裕福ではない。 貧乏というわけでもないが、少しでも親の負担を減らせるように、と基本自炊。 そんなこんなで2時間ほど普通の人より早く寮を出る。 朝は少し忙しい。 この学園唯一の生物部である俺は花たちの水やりにじょうろ片手に学校内を歩き回る。 だだっ広い校庭の花壇を回り、校舎裏の奥にある温室に寄って花たちに朝の挨拶をしながら水をあげて。 この広い学園の中を回るのは一苦労。 でも花が咲くのは嬉しいし、俺の数少ない話し相手でもある。 つい長話してしまうから朝早くに学校にいるんだよね。 「おはよ、今日も綺麗だね。」 温室の中はいろんな種類のバラが咲いている。  バラは育てるのが難しいけど、その分やりがいを感じているかな。 水やりを終えたら何本かバラを摘む。 それを小さな花束にして保健室に。 「おはようございまーす。」 ドアの前から声をかける。 「お、来たな?」 そう言って笑顔でドアを開けてくれるのは保健室の住人、白井優希先生。 俺は白さんと呼んでいる。 女の子みたいな名前がコンプレックスらしい。 そしてバラが何よりも大好きらしく毎朝こうして届けている。 実はバラの苗を大量に買ってくれたのは白さんだ。 だからそのお礼。 「はい、今日はサンブライトだよ。」 サンブライトは黄色が綺麗なバラ。 結構お気に入りだったりするんだよね。 「お、流石!今日も綺麗だな。」 「有難う。あとこれもね。」 ごそごそと鞄をあさって弁当を取り出す。 白さんは顔はイケメンなんだけど料理がまるで駄目。 っていうか壊滅的だ。 毎日どこかしらで買って食べてたらしいんだけど、お世話になってるし、と一度作ったら気に入ってくれたようで。 すごい子供のような笑顔で作ってくれって言われたら断れない。 美味しいっていってくれるし毎朝紅茶を入れてくれる。 料理は一切駄目なくせに紅茶だけは美味しいんだよねー。
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