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「やっとこっち向いてくれたしー。無視とか傷つくんだからー」
何だこいつ。語尾をのばさないと喋れんのか。
うっとうしいやつめ。
そんなことを心の中で思いながらもただの強がりにしかならないのは知っている。俺はチキンだ。鶏なんだよ。
「……なんですか。」
ずっと黙ったままはつらい。
恐る恐る聞けば彩木は足元に座って俺の机に顎を乗せる。
やばい、完全にお座りだ。
「あのねー、昨日君に振られたじゃんー?昨日ー」
その瞬間ざわざわっと教室内が騒ぎ出す。
…なんで教室でしかも注目されてる時に言うかね。
新手のいじめか。
クラス中(他クラスからの野次馬含む)に学園一のイケメンを振ったことがバレた俺は顔を引き攣らせることしか出来ん。
「えっと…すいません。」
とりあえず謝っておく。
今のところ最悪の状況だ。
学園一のイケメンを振った身の程知らずの地味男
明日、いや昼休みには学園中に知れ渡っているであろう。
「あぁ、全然いいよー。諦めるつもりはないよ。
僕も急ぎすぎたからねー、いきなり知らない人に告られてもびっくりだしねー。だからお互いを知るためにお昼ご飯のお誘いー。
昼休みに屋上に集合ね!じゃぁねー。」
一息で言い切った彩木は俺が返事する間もなく鼻歌を歌いながら出て行った。
強引過ぎる…
そして出て行った瞬間クラス中からビームが…
痛い、痛すぎる。穴が開きそうだ。いや、もう開いてるかもしれん。
「なぁ、君、あの彩木とどういう関係なん?」
呆然としていると誰かに話しかけられる。
うわ、金髪赤眼鏡。派手。
「聞いてるんか?おーい。」
聞いてないと思われたのかひらひらと目の前で手を振られる。
「い、いや、あの、何の関係もないと思います…」
少しびびりながら答えると金髪赤眼鏡さんはきょとん、とした顔の後眉を寄せる。
「そんな訳あるかい、わざわざ昼飯誘いに来んねんで?
何もないて…、苛められてるん?大丈夫なん?」
お、心配してくれてるのかと思って顔を上げるとにやにやと楽しそうな顔。くそ、こいつ駄目だ。
もう無理。昨日の夕方に加え朝のこともあり俺の頭はキャパオーバーだ
「あぁ、…もう大丈なんじゃないですか。」
答えるのも面倒になって適当に答える。
「何や、君、おもろいわー。」
そう言って笑みを深める金髪赤眼鏡さん。
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