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楽しめましたか? とクスクスとオユキが笑った。いつの間にか聞き入ってしまった気がつき、つい恥ずかしくなって頭を掻いた。
「なかなか雰囲気があってよかったと思うよ。まぁ、切ない話だったな。親を探すのに雪女になっしまうなんて」
「そうですね。でも、私はそれでよかったと思います。だって親が死体を見つけることがなかったんですからね」
微笑みを浮かべる、オユキが寂しそうだった。
「まぁ、もう少しでおしまいですけど」
「おしまい?」
「あ、いいえ、なんでもないんです。それより佐々木様、酔いが冷めたら温泉でもそうですか?」
と誤魔化すように、彼女は言い。
「そうだな。雪山を歩き回り疲れた。ゆっくりと温泉に浸かれたらと思うよ。少し一人にしてくれないかな」
「はい。ご用がおありでしたらお呼びください」
ぺこりとオユキが頭を下げて、部屋を出て行く。もう少しでおしまいという言葉がどうしても頭にひっかかって仕方なかった。
オユキに案内され、風呂に入った。ほろ酔い気分で疲れきった身体を温め疲れを癒やすが気分はフワフワと落ち着かない。
「あと少しでおしまい。雪山」
「貴方も彼女達の仲間?」
と俺の呟きに重ねるように、日本刀を持った少女が言った。着物に身を包む少女は日本刀の切っ先を突きつけ、俺に尋ねてくる。
「雪女の仲間?」
「は? 雪女は一人だけだろ」
「そう。何も知らないならそれでいいか。ついでに言うけど、雪女が一人だけなんてことはないよ」
少女は日本刀を鞘に戻すと、雪女は雪山の恐怖の象徴だからねと少女はフッと姿を消した。まるで降って溶ける、雪のように、
「恐怖の象徴」
それを呟き、そこが風呂場だと気づくのに少し遅れた。まさかと心のふちに引っかかった疑問を隅に追いやった。
「どうでしたか。お風呂は?」
「大丈夫だ。あ、いや、風呂場に変な女の子がいたんだけど」
「いやです。佐々木様、風呂場に女の子を連れ込むだなんて」
「そうじゃない。風呂場に日本刀を持った女の子がいたんだ」
「日本刀」
オユキの表情がわかりやすく、変わる。オユキと声をかけるが、彼女は聞こえていないようだった。
「とうとう来たんだ。呪い、斬り、仮音が……」
「おい、どうしたんだ。呪いって」
「佐々木様、貴方は何か、その女に話しませんでしたか?」
「何も、ただ、雪女の仲間かと尋ねられだけだ」
「どう答えたのですか?」
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