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「なんて答えればいいかわからなかったよ。ただ、その子は雪女は恐怖の象徴だって、だけど、おかしいだろ。君は雪女なんかじゃないんだ」
「…………」
オユキはギュッと何かを我慢するように、眉を寄せた。何か言いたいことを我慢するような表情だ。
「オユキ?」
もしかして君は、雪女なのかと問いかけてしまいそうだったけれど、そこから先の言葉を言うことができなかった。雪女の怪談は俺も子供の頃に聞いたことがあった。オユキの話してくれた怪談とは内容が違って、道に迷った老人と若者が山小屋に誘い込まれる、家主の雪女は老人を凍死させ、若者に一つの約束をさせた、ここであったことは誰にも話してはならない。話せば、若者は殺されてしまう。
若者は雪女との約束を守り続けるが、最後には約束を破り、雪女が正体を現して消えるというストーリーだ。
「…………オユキ」
と尋ねる前に、女の悲鳴と肉の裂かれる音が響き渡った。その音はどんどん大きくなり少しずつ俺達のいる部屋に近づいてくる。
「君はここにいるんだ。様子を……」
「ダ、ダメです。そこから先には行ってはいけません」
オユキが俺の手をギュッと握りしめ、引き止めるとほぼ、同時だった。襖がドンッと押し破られ、姉様の死体が転がり込んできた。姉様の死体は首を裂かれてる。おそらく即死だ。鋭利な刃物で首を一閃された傷口から痛みはなかったのは不幸中の幸いかもしれない。
「逃げよう」
俺は言った。
「とにかく逃げるんだ。早く」
え? と呆けるオユキの手を取って俺は部屋を出て走り出した。廊下を走り抜けて屋敷の外に飛び出した。背後でオユキが何か叫んでいるが、彼女を気にかける余裕はない。
ザクザクと裸足のまま俺達は走り続ける。雪は相変わらず降り続き、強風が俺達の行く手を阻む。裸足のまま雪山を走るのは辛かったが、手を繋ぐオユキの冷たい手を離さないようにしていた。
「ささ……き、様、佐々木様」
オユキのか細い声が聞こえ、
「佐々木様っ!! お待ちください。佐々木様!!」
「あ、すまん」
「いえ、それよりも、どこかに入らなければ凍えてしまいます」
「そうだな」
と答えるが、あたりに温まれそうな場所はどこにもない。風は強く、雪は降り止む気配が見えない。
興奮した身体が急に冷え切り、雪に触れる両足がジンジンと冷えていく。付け根に針を刺すような痛みが走りガチガチと
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