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歯が鳴り始めても、オユキの手は手放さない。雪のように冷たい手を握りっているだけいい。
「佐々木様、無理をしないでください。このような軽装で外を出歩くなど危険です。皆が来るでしょうから」
「だが。それだと姉を殺した女がやってくるかもしれないんだぞ。少しでも遠く逃げるんだ」
「…………そう、ですね」
「そうだ。何か楽しい話をしよう。な? あんなの見せられた後じゃ気分は最悪かもしれないが、楽しい気持ちになることが大切だ」
と言ってみたが、都合よく、楽しい話や元気になる言葉は思いつかない。
「う。すまん、俺はこういうの苦手だったんだ」
「いいえ、無理をしなくていいですよ。私はこうしているだけで安心できます」
手を繋いで、オユキが微笑む。
「俺みたいなゴツゴツした手なんかでいいのか?」
「ゴツゴツなんてとんでもない。私は好きです。、佐々木様はきっとスゴい人なのだと思います」
「スゴくなんかない。いつも上司にペコペコ、頭を下げるだけのダメ男だよ」
「人の魅力というのは、本人よりも他人が気づくものですよ。佐々木様。佐々木様はきっと隠れた魅力があるのだと思います」
薄暗い雪山を二人で手を繋いで歩いていく。魅力。魅力なんて俺にはないよと言うとオユキはクスクスと笑い。
「遠慮しなくていいのに、佐々木様は謙虚なのですね」
「そうか」
うんと頷いた。
「そうか、そうかもしれないな」
といつまでも、こんな時間が続けばいいという俺の願いは、真っ赤に染まった雪のせいで遮られた。
「つっ!?」
ドサッと姉の死体が雪に落とされ、傷口からドクドクと血が流れて、雪を揺らし、日本刀を持った少女が姿を表した。
「なぜだ。なぜ、彼女達を殺したんだ? 答えろ!!」
風呂と出会った少女は、ほとんど表情を変えずに彼女は答えた。
「それは呪いだから、斬らなければならない。放置すれば人に害をなす危険な存在。邪魔しないで」
「この子も斬るのか」
「もちろん」
「そんなの君が勝手に決めてるだけだろ」
事情は何も知らないが、むざむざ殺されるのを無視はできない。
「なら、これを見ても同じこと言えるの?」
ドンッと凍死した二人の男の死体を少女が投げた。
「社長」
俺とはぐれた、登山メンバーだった。
「この人達は、貴方と同じように招き入れられて、お酒で酔い潰して殺してた。何人も、何人も、それでも同じこと言えるの?」
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