2. 人類の残骸と黒髪の少女

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  場所は村を見下ろせる小高い丘の上。戦没者を悼む慰霊碑に献花した帰りだった。 俺の隣を歩くのは、現代では非常に稀有な天然の黒髪を後ろで束ねた我らが小隊長、玉依守里(たまより マモリ)少佐だ。 ショルダーバッグの中にごそごそと手を突っ込んだマモリ少佐が、中からクリップで留められた書類の束を取り出した。 まだあどけない顔つきの青い髪の少年が、何となくやる気の感じられない視線をマモリ少佐へ投げかけている。 どうやら補充される新米パイロットのプロフィールらしかった。 「岬守(さきもり)搭乗訓練では学年でもトップクラスの成績を修めている。『内生マガ』との同化率も70%を越える逸材には違いないが……」 「なおさら考えられないですね。人事の連中は血迷ったんでしょうか?」 「まぁ……」 マモリ少佐が言いよどみつつ、くるくると長いポニーテールを弄る。言葉を選ぶときの癖だった。  
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