1. この星の生命を喰らうモノ

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  夜の海にそそり立つ白亜の塔。先端に行くにつれて僅かずつ広がりを見せる円柱形をしており、直径は最大で23メートル、高さは140メートルにも及んでいた。 十数世紀前、大繁栄時代の旧人類ですら建造するのに年単位の時間が必要であろう構造物が、一夜にしてオワリ村沿岸沖に出現した。 時刻は深夜二時を回っていた。 塔全体へ脈を打ち伝播する生物発光(ルミネセンス)が、暗闇を押し退けるようにして静寂に満ちた世界を走査する。 伝導速度は決して遅くはないのだが、そのあまりの巨体故にスローモーションでも見ているような錯覚に陥る。 まるで海という途方もない生命体が永い眠りから目覚めようとでもしているような、抗いがたい威圧感を放っていた。 概念生命体、通称『マガ』。 この星の生命を喰らうモノ。  
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