2. 人類の残骸と黒髪の少女

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  「そう言えば、ツルギ少尉も来月で二十歳だったな」 「はい」 それが兵役を終える定年で、俺たちの平均寿命でもある。 村民皆兵につき、『マガ』との戦いで慰霊碑に刻まれた連中の分を差っ引いても、25年も生きられれば御の字というのが俺たちの相場だった。 まぁそのおかげで、いくらタバコを吸っても健康を害する前に死ねるわけだが。 「寂しくなるな……」 「いえ。俺は警備隊に残ろうと考えているので」 ヒトナギ大尉と同じ銘柄の紫煙が二筋、雲一つ無い青空へとくゆる。 「結婚はしないのか」 それが一般的な、兵役を生き残った者の余生だ。ただ、 「相手がいませんよ」 意中だった相手が慰霊碑に刻まれている事も多いし、 「探せばいいじゃないか」 新しく探すにしても、残された時間はあまりに短い。その上、 「木俣(きのまた)系の雄性体と子供を作れるのは、どこの系だったかな……?」  
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