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この三系交配の法則で生を受ける子供は、『黒い髪』と『人類としての寿命』を持っている。
「そうだな……」
例えば俺の隣でうつむいてしまった、マモリ少佐のように。
「そうでなければ……」
ふっ、と。
戦場ではこれ以上ないくらい頼もしい彼女の存在感が、何かの間違いみたいにぽっかりと消えて無くなってしまったような気がした。
紫煙をくゆらせる小さな唇で、押し殺したような小さな声で。
「寂しすぎる。あまりにも……」
消え入るように呟かれた彼女の声は、聞かなかった事にして。
「……どうぞ」
携帯灰皿を差し出した俺は、卑怯だっただろうか。
ヒトナギ大尉はいなくなってしまった。だがそれすら、これから彼女が味わう孤独のほんの一部に過ぎない。
やがて俺も、モカのやつもいなくなるだろう。これから入って来るアギト新兵すら、彼女より先にいなくなる。
それでもなお無情なほど茫洋と道のりは続き、生命としての終着点はあまりにも遠く……。
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