3. 春は泡沫、やぶれてなお青く

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  だがアギトが何より気に入ったのは、その極めて感覚的な操作感だった。 コックピットは上下左右ほとんど視界を遮られる事の無い全面キャノピーになっていて、ボタンもレバーも操縦席すらも無く、 計器の類はホロウィンドウとなってパイロットと共に宙に浮かぶ。 唯一、パイロットと岬守を繋ぐのは『DMD(デミ・マガ・ドライブ)』と呼ばれるDM力場を介したHMI(ヒューマン・マシーン・インターフェース)、 要するに、本当に身体と岬守が一体化しているような、手足を動かすような感覚で四枚のハネを操ることができるのだ。 十数世紀前に起きた大絶滅以前、この星では鳥類と呼ばれる生き物が縦横無尽に大空を飛び回っていたという。 もちろん実際に見た事はないので、彼らがどんな体でどんな風に飛んでいたのかは想像する事すら難しいのだが、 でも、きっとこんな気持ちで飛んでいたのではないかと思うのだ。  
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