5. 岬守の歌

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  「これ」 「はえ……?」 そう言って差し出されたのは、いつも吸っているタバコの箱と、愛用のオイルライターなのでした。 意図が分からずにポカンとしていると、ツルギくんが目を合わせないままもごもごと言うのです。 「お前に預ける。何か、俺が吸ってるといろいろマズイって。マモリ少佐が」 いろいろマズイ? マモリ少佐? ええと、ちょっと待って下さいなのです。 ふたりの会話は上の空で聞こえていたのですけれども、素早い思考は苦手なのですよ。 だから後衛の防壁手なんかをやっているわけなのですけれども……。 かくかくしかじか。ふむふむ。ええとですね。 「……受け取ってくれるのか、受け取らないのか」 「う、受け取る! 受け取るっ!!」 「うお……」 慌ててツルギくんの手に飛びつきました。 ちょっと遅れてじんわり心臓のあたりからあったかい気持ちと、むずむずする痒みが体の表面をくすぐっていくのでした。  
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