6. 魂の依代を守る者

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  丘の上の慰霊碑は、一枚だけではない。 マガの侵食を逃れた木本植物が、この辺りには豊富だった。 こうした群生相はかつて『森』や『林』とよばれ、昆虫や野生動物をはじめとする生命の楽園だったという。 だが、今となっては潮風に揺れる木の葉の他に動くものが無い。 まるで時間が止まった異世界のように厳粛な静けさで満たされた木々の中に、 無数の慰霊碑がひっそりと安置されている。 古い方から何枚かは、村の家々と同じ『ロストテクノロジー』によって造られた白い特殊素材でできている。 さすがに風化やひび割れも目立つが、刻まれた文字が読めないほどではない。 一枚目には、いわゆる『三系』以外の苗字も多い。 旧人類の生き残りと新たに生まれたデミ・マガ達が、力を合わせて共闘していた頃のものだろう。 だが二枚目からは、ほとんど三系ばかりになってしまう。 苗字というものの持つ意味が変わったためか、現代に通ずるような個性的なファーストネームが増えて行く。  
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