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プロローグ
「こんな人生、もう嫌だ」
あふれる涙が頬を、服の裾を濡らしていく。震える体が止まらない。ひっくひっくと漏れる嗚咽が静かな部屋に寂しく響く。
「なんでこうなったんだろう。こんなはずじゃなかったのに……こんなことになるなら、こんなことになるなら……っ!!」
身の内を焼き尽くすみたいに、ドロドロとした感情が綺麗な心を蝕む。悲しくて、悔しくて、そして情けなくて、ぶつける当てもないから燻っていく。
こんな感情に苛まれるなら、もう生きていたくない。そんな想いが体を震わせる。
「もう、もう嫌だ。嫌だよ……」
疲れてしまった。とっても簡単に、あっけなく。ヒトによっては「そんなことで?」なんて、半笑いで言ってのけてしまえるもので。
でも、隠してきたものがあった。親になんて言えない。それでも、失くしてしまったもの。
「幸せに、なりたいよ……」
縋ることも赦されないのか。わかったふりをされるだけ、心を救ってくれるヒトなんて誰もいない。こんなことを引き起こしたのは誰だ?――自分だ。
幸せになりたかった。誰かの一番になりたかった。そんなこと無理だってわかっていたとしても、望んでいた。望まずにはいられなかった。
こんな人生を無かったことにしたい。こんな狂った人生を、こんな人生にしてしまった自分自身を、すべて。
強く望んでいた。矛盾した想いを、強く、強く望んでいた。望んでしまっていた。
息ができない。胸が苦しい。
赤が見える。黒が混ざった赤。じんわりと、手首を汚していく。
あなたの本当の願いは、なぁに?
それは。それは、
「誰か、私を――」
――どぽんっ
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