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背中にいたエヴァは、そのときのルカの表情を見ることは叶わなかったが、周囲の反応が見なくてよかったという思いを沸かせる。
俊敏になったモノ達でごった返すギルドに足を踏み入れ、空いていた席にエヴァを下ろすと、ルカはそのまま待つようにエヴァに声を掛け誰かを呼びに行く。その入れ替わりに残りの空いていた席に腰を下ろしたのはレオとレアだった。レオからは奇異の眼差しを向けられ、レアからはまたあの探るような眼差しを向けられる。
不躾な視線に晒されながら、エヴァは顔を俯かせる。こういう視線も、ただただ怖かった。無意識に体が震えを取り戻していく。
「なんだ、こいつ。震えてるぞ、兄上。ルカが連れてきたけど、なんか怪しくないか。嗅いだことないにおいもするし……血のにおいもする」
「ふむ、確かにの。なぁ、あんた。名はなんというのだ」
声を掛けられ、ビクッと肩があがる。慌てて顔を向ければ、そのことに眉根を寄せるレオと目があい、また体が震える。
「あ、あの、エヴァ、です」
「エヴァ、か。良い名だ」
しみじみとうなずき、レオは二カッと歯を見せて豪快に笑う。
「のう、エヴァ。俺はレオという。隣にいるのは俺の妹のレアだ。一応双子なんだがの、なかなか見られんのだ」
「ふたご……」
「こう見えて、あたしらは19だから。子ども扱いすんなよ。まぁ、お前中等部に通うガキみてぇだし、分は弁えるか」
「……えと、」
なんて言おうか迷い、パクパクと口を動かしてやがて閉口する。中等部に通うと言われても、己の歳ですらわからないエヴァにとって分を弁えることもままならない。レアの高圧的な態度と鋭い眼つきに体は休まず震えるし、周囲のモノ達もじろじろと不躾に観察してくるためエヴァはすっかり萎縮してしまっていた。
「レア、エヴァになんて態度をとるんだ。もうガキじゃないのなら、レアこそ弁えるべきではないかの」
「……兄上まで味方につけるのかよ」
「レア」
「レオの言う通りですよ、レア。エヴァさんに酷い態度をとらないでください。エヴァさん、仲間がすみません。今踏まれた足と腕を診てもらいますね」
ヒトを連れて戻ってきたルカの厳しい言葉を向けられたレアはムッと顔をしかめ、より一層エヴァを睨むが、ルカの優しい笑みを向けられたエヴァはホッと息を漏らす。
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