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ひそひそ話に少しの変化を与えながら、ルカの背中に背負われながらギルドに向かうエヴァ。目の前の無造作に結われた金髪が鼻先をくすぐる。男にしては、花のような香りが髪の毛からするような気がした。
「エヴァさん、とっても軽いですね。ちゃんと食べていたんでしょうか」
「え……どうなんでしょうか。なんか、わかんないです」
「お腹空いてませんか? もうお昼時ですし」
「う、うぅーん……軽く?」
エヴァの返しに、ルカはぷっと吹き出す。そのあとは肩を震わせ、笑いをこらえている。
「……何が面白いんですか、何が」
「あ、すみません。なんか面白くて」
「む……なんかバカにしてませんかね、ルカさん」
「あ、痛い。すみません、すみません。蹴らないでください、エヴァさん」
謝っているはずでも笑いをこらえきれていないルカの様子に、エヴァは不貞腐れる。何が面白かったのかわからない。そのことが伝わってきたのか、ルカは少しだけ優しい眼をした。
ギルドの前にたどり着く。そこにはルカとは違うが、表すなら橙が混ざった金髪を持つ男女が出入口に立っていた。近寄ってくるルカに気付いたのか、ぱっと笑顔を浮かべたが、その背中にいるエヴァの存在にすぐに気付いてギョッと目を剥く。
「ルカ!? なんだ、びしょ濡れではないか。それに、その背中のおなごはなんだ!?」
「レオ、帰ってたんですか。ちょっと拾ってきました」
「拾ってきたって……ルカ、誘拐はダメだぞ?」
「レア、誘拐なんてしてません。れっきとした保護ですよ、保護。いいから開けてくださいよ、両手塞がっているんですから」
不服そうに口を尖らせるルカに、レオと呼ばれた体格のいい男は慌てて木製の扉を開ける。レアと呼ばれたレオとは違い小柄な女はその間もエヴァをじっと凝視している。なんだか観察しているような眼つきだ、とエヴァは感じる。
ルカがそのまま扉をくぐると、外まで聞こえていたざわめきはすっと波が引くように静まった。どのモノ達も判を押したようにルカを見ている。
「やはりこうなるのかの」
「そりゃ、あのルカだぞ。そうなるだろう、兄上」
「あのルカって何ですか。それより、マスターはいますか。というよりいますよね。僕はあのマスターに呼ばれて戻ってきたんですから。いなきゃおかしいでしょう」
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