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「ちょ、
動かないで……
きつい」
「だったら、
やめ、て」
痛いとか苦しいとか
散々わめいたのに、
細く見える腕は
がっちりとあたしを
押さえ込んで、
自由にしてくれない。
同意した覚えはないのに、
見せてる抵抗ほど
いやだと思っていない
自分に驚く。
「……ッ、あ……」
思わず漏れた声に、
彼──
日下部蛍太(くさかべ けいた)──
が反応する。
「あれ。
莉々(りり)……
今の、悪くなかったんじゃない」
「……ッ、ちが……」
とっさに首を
横に振るけど、
今まで見たこともないような
表情の蛍太が
にやりとあたしを見下ろす。
泣いて
懇願するような
性分でもないけど。
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