『人が消える』

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今年の四月、私のクラスメイトが失踪した。 いきなりのことで、普段表情が変わらないことで有名な担任の木村先生が真っ青な顔で話していたことを今でも鮮明に覚えている。 そのとき私は、なんとなく非日常で現実感のない話だと聞き流していた。 前の席のむっちゃんは、読んでいた魔法学校の小説をその場に置き、「きっと見つけたのよ!9と3/4番線を!私もイギリスにいた時はホグワ」などと、不謹慎なことを言って木村先生に怒られて涙目になっていた。 そして、その話を忘れかけてた頃に女子高生大量失踪事件として、私達の学校は全国的に有名になってしまった。 そう、失踪者がこの学校から出てしまったのだ。三人も。 今度は違う学年だった。一年生が二人、三年生が一人だ。 事態を重く見た学校が集会を開き、帰るときは二人以上で帰ること、と私達に伝え、その日は休校となり、「事件を解明するのよ!」と息巻いたむっちゃんを引き摺り私達は家へ帰った。 それ以来、不定期に町から人が消えるようになった。 高校からは、一人、二人と消え、次に中学校、小学校、役所、市場、スーパー等、いたるところから人が消えた。 結果として国中から注目が集まる私達の町は、警察官大量増員とともに交易が盛んだった町から、人の出入りが乏しい町へと変貌してしまった。
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