『人が消える』

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そして、今日が約束の日曜日。 梅雨の時期も去り、季節は夏に向けて変わり始めている。 私は、部活終わりということもあり、真っ赤なジャージ上下というなんとも色気の欠片もない格好だ。 …それにしても遅い。むっちゃんは何をしているのだろうか。 私は、集合時間の十分前には来ていたが、それから一時間経つ今でも、むっちゃんの姿は見えない。 「ひ、ひったくりー!!」 いきなり駅のロータリーから大きな絶叫が聞こえた。 思わず振り向くと、黒ずくめのサングラスをした男が、中年の女性を転ばせバッグをひったくり、走っているところだった。 こんな目立つところでひったくるなんて、馬鹿なひったくりだなぁ…なんて思いながら、私はそのひったくりを追った。 私は女子高生だが、脚力には自身がある。学校対抗のリレーでは、私に陸上部から助っ人を頼まれる程だ。 そして、私自身、正義感が強い方だと思う。なので、目の前の悪事は見過ごせない。 追いかけていると、ひったくり犯が安心したのか、速度を緩めた。 私は、走る速度を限界まで上げると一気にひったくり犯の背後に迫った。 するとドンッと鈍い音がして何かにぶつかった。 目の前が痛みによるショックでチカチカする。視界が覚醒すると目の前には季節外れのトレンチコートを着た男がひったくり犯の襟元を掴んでいた。 コートを着た男は、そのままひったくり犯を地面に引き倒した。 男の身長は180cmほどで、髪の毛はくしゃくしゃの天然パーマで気だるげな雰囲気をしている。男はひったくり犯に気だるげな目線を向け、こう言った。 「俺に何割くれる?」 私はひったくり犯共々男にドロップキックした。
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