龍崎貴浩という男

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──13:00。 RYUZAKI工房での打ち合わせ。 時間に遅れないように10分前に到着したけど、貴浩部長は不在だった。 出張先からまだ戻ってきていないらしい。 30分ほど待つと、貴浩部長が部屋に入ってきた。 「蘭さんお待たせしてすみません!午前中の内に戻る予定が、ちょっとしたトラブルで…」 「いいえ、お忙しいのにありがとうございます」 「慌ただしくて申し訳ないですが、早速始めましょうか」 今日は佐伯主任不在での初めての打ち合わせ。 社に帰ってから報告しなければいけない私の責任は重大。 貴浩部長の一言一句も聞き洩らさないように、必死にメモを取りながら頭をフル回転させていた。 佐伯主任とコンビを組むってこと、足りなかったのは自覚や向上心だけではなかったようだ。 もっと佐伯主任の役に立てるような、パートナーとして胸を張れるようなデキる女になりたいという"自覚"だけははっきりと私の中に芽生えていた。
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