龍崎貴浩という男

6/16
前へ
/40ページ
次へ
「今夜?あの今日は元々こちらにお戻りの予定ではなかったんですか?」 今日しか空いてないからって、打ち合わせを今日にしたんじゃなかったの? 「あ、しまった。口が滑ったようだ。佐伯さんが今日はワーセクとの会議が入ってて外せないと知って、今日しか空いてないということにしたんだ」 「どうして……ですか?」 「どうして、か。強いて言うなら、蘭さんと2人きりで話してみたいと思ったからかな」 私と2人きりで……? 「ねえ、蘭さんってさ、自分の素顔を他人に見せたくないって……思ってるんじゃない?」 貴浩部長が射るような視線を私に向けていた。 私の内面を見透かしているかの様な、真っ直ぐな視線。 私が貴浩部長を苦手だと感じるのは、きっとこの視線を感じていたからだ。 いきなり核心を突かれて、かなりドキッとしてしまった。 なぜ?なぜこの人は、私の中の触れられたくない部分に………。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加