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腕から痛みが消えた。
気づけば双子はいなかった。
そして背後に、
猫がいた。
「……だれ?」
「僕はチェシャ猫さ」
これは猫と言うべきか。
男の人。
ピンクと紫のボーダーパーカーを、目元深くまで被っている。
顔は見えなかった。
「ネコ?」
「そう、チェシャ猫。アリスの案内役さ。アリス、君は白ウサギを追うんだ」
「私はアリスじゃない」
「あなたはアリスだよ」
「アリスじゃない」
「ア~リ~ス~」
「………」
何を言ってもダメだった。
「白ウサギって?」
「白ウサギは白ウサギ」
「私はどこへ行ったらいいの?」
「まずはお茶会」
「……、お茶会はどこ?」
「さぁ。でもアリス、さっきは真ん中の道で正解だよ。左右の道は不正解」
「左右の道に行ってたら?」
「赤の女王に食べられる。元居た世界へは帰れない」
やはりこんなところ、来なければ良かった。
しかし、もう遅い。
「お茶会はどこ?」
「知らない」
前には一本道。
なら、前に行くしかないだろう。
しばらく進むと、道が左右に別れてしまった。
しかし、左の道に目を凝らすと人影が見えた。
「あれがお茶会?」
「そうだよ」
迷わず左へと進んだ。
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