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人影に向かって歩いているのに、全く近付けない。
何度も何度も、同じ場所に戻ってきてしまう。
「なんで…」
「左は不正解」
「でも、右に行っても何もないよ」
「左は不正解」
右に、進んだ。
するとあっさり、お茶会についた。
「右が正解」
猫は呑気に言うが、目の前に広がる景色に、私は言葉を失う。
「これが、お茶会?」
テーブルの上に、大きすぎる帽子をかぶった少年が死んでいた。
血だらけで、死んでいる。
首と胴体が切り離されている。
テーブルの上は、真っ赤なインクで染まっていた。
「なに…これ」
「あ~あ、今日の被害者は帽子屋か」
「被害者って?」
「赤の女王のこと。一日一人、この世界の住人を殺すんだ。」
「……」
「アリスも早くここを出ないと殺されちゃうよ」
「……お茶会に来たら、何かあるの?」
「眠りネズミは居ないかい?」
「いますよここに」
大きな白いネズミが、少年の陰から出てきた。
その姿は血に汚れてはいない。
美しい、白い体毛だった。
「白ウサギをお探しですか?もちろん知っておりますよ。アリスの髪の毛を一本くれたら、お教えしますとも」
「なんで髪を?」
「赤の女王からの魔除けです」
まぁ、髪の毛一本くらいなら…
プチッ
一本、引き抜く。
ウゴウゴウゴウゴ
その髪は動き出した。
「キャァ!!」
髪をネズミはキャッチしたかと思うと、ムシャムシャと食べてしまった。
「……」
「ありがとうアリス様。これで少しの間、赤の女王に食べられなくてすむ。白ウサギはあちらの道ですよ」
眠りネズミは黒くて小さな扉を指差した。
「ネズミさん。」
「なんでしょう」
「帽子屋さん、居なくなっちゃったね」
「えぇ。いい人でした」
眠りネズミは
眠りについた。
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