遊園地のアリス

5/6
前へ
/14ページ
次へ
その扉はあまりに小さくて入れない。 「どうしよ…」 「アリス、あれをお食べ」 チェシャ猫が指差したそれは、お茶会テーブルの回りに落ちているクッキー。 もちろん血まみれである。 「嫌だよこんなクッキー」 「食べなきゃ先へは進めない」 私はクッキーを指先で摘まむ。 するとクッキーに染み込んでいた血が、あっという間に消えていく。 その代わり、焦げ跡のような文字が残されていた。 『すべての言葉が真実だとは限らない』 「?」 「お食べ?」 恐る恐る口に含む。 すると突然、目の前の景色が変わった。 全てが大きくなった。 私が小さくなったのか。 「正解」 猫は言った。 「さぁアリス、あの扉の向こうへお行き。」 さっきの言葉が頭を掠めた。 扉の先には、巨大な薔薇が広がっていた。 白い、薔薇。 「あれ」 チェシャ猫はいなかった。 巨大な薔薇に阻まれて、道がない。 すると一本の薔薇が、私に話し掛けてきた。 「サキにイク?」 「行ってもいいの?」 「アリスのチをクレルナラ」 「……」 「イッテキ、チョウダイ」 まぁ、一滴くらいなら。 私はその薔薇のトゲで手の甲にキズを付けた。 一滴血が、地面に落ちる。 途端、白かった薔薇が赤に染まる。 阻んでいた道が、一気に開ける。 「サヨナラアリス」 「ありがとう薔薇さん」 道の先に、城が見えた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加