遊園地のアリス

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城は、いたって普通の城だった。 白い、城。 真っ白な、城。 しばらくそれをボーッと眺めていたら、 ギギギィィィィィィイイ 突然扉が開いた。 私を迎え入れてくれたのは 真っ赤なドレスを身に纏った、 細身の女性。 「あなたはだあれ?」 「赤の女王」 赤の女王は、クスリと笑う。 その声は、冷たかった。 「ずいぶんと遅かったわね、アリス」 どこかで、見たことのある顔。 「可愛いかわいい私のアリス」 なんだか頭がボーッとする。 「当たり前よ」 目の前の景色が、ぼやけていく。 「だってあなた、もう首だけになってるんだから。 残念ね。不正解よ」 「クッキーの言葉、覚えてなかったんですか?」 白ウサギが、目の前にいる。 と言ってもそれは、この迷路に入る前にいた、あのウサギの着ぐるみ。 「白薔薇の言葉と、チェシャ猫の言葉を信じたのがいけなかったですね」 その声は淡々としていて、あの時の陽気さはなかった。 「白の女王の所へ行ければゴールだったんですけどねぇ。見事に赤の女王の所へ行ってしまうとは」 呆れ顔の白ウサギは、私に金色の粉を振りかけた。 「チェシャ猫の言葉の逆を行えば、白の女王の元へ行けたんですけどねぇ~」 赤の女王にスッパリと切られた首。 その断面からメキメキと、体が生えてくる。 「今日からあなたは帽子屋です。この世界で、『アリスの迷路』の住人として生きてもらいます いつ殺されるか分からない、赤の女王の恐怖に堪えながら」 愉快そうに、白ウサギは笑った。 「あぁ因みに、あの赤の女王は君のお母さんですよ。昨日、前の赤の女王が死んでしまったので、その代わりにね」 目が覚めると、綺麗に整頓されたお茶会テーブルが目の前にあった。 「初めまして、新しい帽子屋さん」 あの時のネズミだろうか。 眠りネズミが話し掛けてきた。 「今日からまた、よろしくお願いします」 遠くから、女の子の声が聞こえた。
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